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大阪家庭裁判所 昭和37年(家)3229号 審判

申立人 小川幸一(仮名)

事件本人 細谷実(仮名)

主文

申立人を事件本人の親権者に指定する。

理由

筆頭者申立人、同細谷昭一の各戸籍謄本の記載及び当庁調査官の調査結果を綜合すると、(1)申立人は昭和二〇年一〇月頃当時夫である細谷昭一と別居中の細谷ミサヲと親しくなり、以来昭和三六年三月二〇日同女が死亡するまで同棲生活を続けたが、その間昭和二一年一二月二七日に事件本人が申立人と同女との間の子として出生したこと、(2)しかるに同女と細谷昭一の離婚は成立していなかつたため、事件本人は両人の間の嫡出子の推定を受け、その参男として出生届がなされたこと、(3)右事実に基ずき昭和三七年一月八日事件本人の戸籍の父欄、続柄欄の各記載の訂正審判がなされ、同年二月二三日その旨の戸籍訂正がなされた後、申立人は同年二月二三日認知届をなしたこと、(4)事件本人は出生時より現在に至るまで実父である申立人の下で養育され、申立人は事件本人を唯一人の実子として愛育していることが認められる。ところで、民法第八一九条四項、五項にいわゆる「協議をすることができないとき」とは親権者である実母が死亡していて認知した実父との間に非嫡出子の親権者の指定につき協議することができず、しかも当該実父がその子の親権者として適当と認められるときも含むと解すべきであるところ、本件においては、親権者である細谷ミサヲが死亡していて申立人が事件本人の親権者の指定につき協議することができず、かつこの場合諸般の事情から考えて申立人をその親権者に指定することが最も望ましいと認められるので、民法第八一九条五項を適用して主文のとおり審判する。

(家事審判官 藤野岩雄)

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